抵当権消滅請求
抵当権が付着している不動産を、抵当権が付着した状態のままで取得した者
(第三取得者という)は、いつ債権者の意向により任意競売(抵当権の実行)
にかけられるかわからないという不安定な状態に置かれてしまう。
そこで民法第379条では、第三取得者からの請求により抵当権を消滅させることが
できるという仕組みを設けており、この仕組みを「抵当権消滅請求」と呼んでいる
(民法改正により2004年4月1日以降は「抵当権消滅請求」という名称になった。
旧名称は「滌除(てきじょ)」)。
なお、この反対に、債権者からの請求により抵当権が消滅する仕組みとして民法第378条
の代価弁済が設けられている(詳しくは代価弁済へ)。
民法第379条の抵当権消滅請求の仕組みは次のとおり。
まず、抵当権が付着している不動産を、抵当権が付着した状態のままで取得した者
(第三取得者)は、自分が適当と認める金額を債権者に呈示して、抵当権の消滅を要求す
ることができる(改正後の民法第379条)。債権者が、この要求から2ヵ月以内に任意競売
の手続き(すなわち競売の申立て)を行なわない場合には、第三取得者が呈示した金額の
支払いで抵当権が消滅することを債権者が承諾したことになる(改正後の民法第384条)。
例えば、債権者Aが債務者Bに3,000万円を融資し、不動産Pに3,000万円の抵当権を設定した
とする。その後Bがこの不動産Pを500万円で第三者Cへ売却したとする。本来、この不動産P
の時価評価は3,500万円だが、3,000万円の抵当権が付着している分だけ売却価格が下げら
れているとする。
このとき第三取得者Cは、債権者Aに対して「Cが2,500万円をAに支払うので、これにより抵
当権を消滅させる」旨を請求することができる(2,500万円という金額は例えとして挙げた
もので、事情により幾らにするかは第三取得者が決めてよい)。
このCの請求を拒否するためには、Aは請求から2ヵ月以内に任意競売の申立てをしなければ
ならない。Aが任意競売の申立てをしないときは、Cが2,500万円を支払うことで抵当権が消
滅する。このような仕組みが、改正後の民法379条に規定する抵当権消滅請求である。